10月3日、東京大学本郷キャンパス。
この日、MISの学生たちによる「新規プロジェクト立案コンテスト発表会」が行われました。
発表したのは3つのチーム。
インドネシアの防災、タイの食品廃棄、そしてインドネシアの防災教育。
それぞれが異なる社会課題に着目し、自分たちなりのプロジェクトを考えてきました。
ただ、この日の発表で語られていたのは、すでに完成したプロジェクトではありません。
社会課題について調べ、企業や団体に話を聞き、自分たちなりに「ここに働きかけられるのではないか」と考える。
そして、それを人前で発表し、質問を受ける。
今回の最終発表は、学生たちがここまで考えてきたことを形にし、次の活動へつなげていく一つの節目でした。
日本の防災技術と、インドネシアの現場をつなぐ
チーム1が取り上げたのは、インドネシアの洪水問題です。
そこで考えたのが、日本の防災用品を、使い方を学ぶ機会とセットで現地へ届けるプロジェクトでした。
単に防災用品を寄付するのではありません。
現地の学校で防災ワークショップを行い、実際に製品を使ってもらう。
その過程で現地のニーズや課題を把握し、日本の防災関連企業へフィードバックする。
現地にとっては防災への備えを考える機会になり、日本企業にとっては、海外展開を考えるうえで現地の声を知る機会になる。
その間をMISがつなぐという構想です。
チーム1の皆さんは、発表までにもすでに動き始めていました。
旅行会社や現地で活動するNGO、JETROへ話を聞き、危機管理産業展「RISCON 2026」にも足を運び、防災関連企業14社と直接コンタクトを取ったといいます。
春の渡航では、現地でのニーズ調査や学校との関係づくり、現地学生団体との連携などを進める予定です。
その後、調査結果をもとに企業と相談し、実際に現地で使う防災用品やワークショップの内容を具体化していきます。
目指しているのは、MISがずっと支援を続けなければ成り立たない形ではありません。
日本企業の製品や技術が現地へ届き、現地の人たちが実際に使い、学び、自分たちの暮らしを守っていく。
MISがいなくても防災が続いていく状態をつくる。
そこまでを見据えた提案でした。
自分たちで支援するのではなく、「支援する人」を支える
チーム2が着目したのは、食品廃棄と食糧不足です。
まだ食べられる食品が捨てられている一方で、十分な食事を得られない人がいる。
その不均衡に対して、チーム2が選んだのは、自分たちで新たなフードパントリーを立ち上げることではありませんでした。
すでに現地で活動している団体を支える。
それが、このチームの出発点です。
最初の活動地域として選んだのはタイ。
現地で余剰食品を回収し、必要としている人へ届けている団体などを訪ね、食品がどこから集まり、どのように保管・配布されているのか。その仕組みを学びます。
そのうえで、
「どこに運営上の負担があるのか」
「活動を継続・拡大するために、何が必要なのか」
を探っていく計画です。
MISが日本の学生団体であることを生かして日系企業との接点をつくることや、広報、ボランティア募集、食品の回収・保管・配布の仕組みを支えることなども、可能性として挙げられていました。
ただし、何を支援するかを日本にいる段階ですべて決めているわけではありません。
まず現地を見て、実際に活動している人たちの話を聞く。
自分たちが想定していたことと、本当に求められているものとの違いを知ったうえで、MISにできることを考えていくプロジェクトです。
防災を「知っている」から、「自然に動ける」へ
チーム3が掲げたのは、「防災をSecond Natureにする」という考え方でした。
災害が起きたときに、「何をすればいいんだろう」と考えてから動くのではなく、自然に行動できる。
防災を、知識として知っている状態から、日常の中に根づいたものへ変えていくことを目指します。
対象として考えているのは、地震や津波が多いインドネシア・スマトラ島。
その手段として提案したのが、「防災絵本」です。
背景にあったのは、過去の津波の経験が歌や伝承として地域に残り、その記憶が、その後の災害時の避難行動につながった事例でした。
そこから、災害時の行動を一度教えて終わるのではなく、繰り返し触れられる形で日常の中に残せないかと考えました。
絵本であれば、幼い頃から手に取ることができる。学校に置けば友人同士で共有でき、家庭にあれば家族で防災について話すきっかけにもなる。
今後は、現地の学生や子どもたちとも関わりながら内容をつくり、完成後には実際に学校へ配布し、行動や意識にどのような変化が生まれたのかを確かめていく計画です。
「なぜ、その方法なのか?」
各チームの発表が終わるたびに、審査員3名からフィードバックや質問が投げかけられました。
そこで問われていたのは、スケジュールや進め方だけではありません。
質疑では、
現地で活動している団体が抱えている課題を、今の段階でどこまで把握できているのか。
という問いや、
すでに歌や伝承によって防災行動が受け継がれてきた事例があるなかで、なぜ絵本なのか。
といった、企画の前提に立ち返るような質問も出ていました。
また、日本側で考えたものを現地へ持っていくのではなく、現地の学生と最初から一緒につくる方法もあるのではないかという意見や、活動によって生まれた変化をどのように測るのかという指摘もありました。
支援しようと考えても、本当に相手がそこに困っているのか。
良いと思った方法が、本当にその課題に合っているのか。
企画を前へ進めるだけでなく、一度立ち止まり、その前提から問い直していく。
「なぜ、その方法なのか」
「自分たちは何を分かっていて、何がまだ分かっていないのか」
「現地で何を確かめる必要があるのか」
発表と質疑応答を繰り返す様子からは、「最終発表」とはいえ、ここですべてを決め切るのではなく、この先の活動につなげていこうとする姿が見えてきました。
選ばれたのは、チーム1
3チームの発表と、それぞれへの質疑応答を終え、審査が行われました。
今回選出されたのは、インドネシアの防災問題に取り組むチーム1。
選出されたチームは、翌日の外部ピッチへ進むことになりました。
ただ、今回の発表で「答え」が決まったわけではありません。
チーム1は春の渡航で、現地の人たちが防災において実際に何に困っているのかを聞き、学校や学生団体との関係をつくりながら、現地の状況を確かめていくと話していました。
日本で調べ、考え、つくってきた企画を、そのまま現地へ持ち込むのではない。
自分たちの考えを持って現地へ行き、そこで見たこと、聞いたことをもとに、もう一度考える。
今回の発表を聞いていると、その先まで含めてプロジェクトなのだと感じました。
見学を終えて
「社会課題を解決する」と聞くと、とても大きなことのように感じます。
けれど、今回の発表を通して、その言葉の裏には、何度も考え、調べ、話し合いを重ねながら、自分たちなりの答えを探していく過程があるのだと感じました。
何が本当の課題なのか。
自分たちには何ができるのか。
そして、考えた方法は現実的に実行できるのか。
学生たちは、それぞれが向き合う社会課題について情報を集め、実際に企業や団体へ話を聞きながら、自分たちなりのプロジェクトを考えてきました。
そして、発表の場では審査員から新たな問いが投げかけられます。
自分たちでは十分に考えたつもりでも、別の立場から見ることで、まだ見えていなかったことに気づく。
自分の考えを伝えることも、人の意見に耳を傾けることも、簡単ではありません。
MISが掲げる「次世代リーダー」の育成には、こうした経験もつながっているのだと思います。
自分たちの頭で考え、仲間と一つのものをつくり上げ、外からの問いを受けて、さらに考えを深めていく。
今回の発表は、そんな学生たちの挑戦の一場面だったように感じました。
春、選ばれた企画は現地でどのような発見を経て、どのように変わっていくのでしょうか。
その後の活動にも、引き続き目を向けていけたらと思います。
MISの皆さん、貴重な活動の現場を見学させていただき、ありがとうございました。
活動見学日:2026年10月3日(土)