帝京大学八王子キャンパスのトレーニングルーム。
今回、ガクチカワーク編集部は、帝京大学バーベルクラブが普段活動する場所を訪れ、主将の和泉慧(わいずみ・あきら)さんにお話を伺いました。
鍛え上げた身体でステージに立ち、筋肉の大きさや形、全身のバランスを競うボディビル。
食事を管理し、何か月もかけて身体をつくり上げる姿からは、一人で自分を追い込み続ける、孤独でストイックな競技を想像するかもしれません。
しかし、和泉さんのお話に繰り返し登場したのは「みんな」という言葉でした。
増量も、減量も、初めて経験した敗北も、同級生と一緒だった。
「気持ちとしては個人ですが、チームみたいな感じでやっています」
ステージで評価されるのは、一人ひとりの身体です。
それでも、思うような結果が出なかったとき、もう一度競技へ向かわせてくれたのは仲間の存在でした。
同じステージで競うライバルが、競技を続ける支えにもなる。
和泉さんが「いい意味でラフ」と表現する帝京大学バーベルクラブでは、身体を鍛える日々を通して、どのような関係が育っているのでしょうか。
競技未経験で入部し、現在は47名の部員を率いる和泉さんのお話から、その現場をたどります。
企画担当者より
鍛え上げられた身体の奥に、どんな思いがあるのだろう
取材前、私はボディビルという競技について、ほとんど知りませんでした。
食事やトレーニングを厳しく管理し、自分を追い込み続ける。とてもストイックで、自分との闘いを重ねる競技なのだろうという印象がありました。
だからこそ、その競技を続ける人に興味を持ちました。
日々どのようなことを考え、どんな感情を抱きながら、自分を動かしているのだろう?
鍛え上げられた身体や大会の結果の奥にあるものを、ご本人の言葉で聞いてみたいと思いました。
ボディビルをよく知らない自分だからこそ抱いた素朴な疑問を持って、和泉さんのいる現場を訪ねました。
企画・取材・編集:野口香織
帝京大学バーベルクラブ|基本情報
※2026年7月の取材内容と公式情報をもとに整理しています
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 帝京大学バーベルクラブ |
| 団体ロゴ | ![]() |
| 設立 | 2019年 |
| 主将 | 和泉 慧 |
| メンバー数 | 47名(取材時点) |
| 活動日・拠点 | 帝京大学 八王子キャンパス トレーニングセンター / 毎週金曜日 16時半〜 |
| 主な競技 | ボディビルディング、フィジーク、パワーリフティング |
| 公式情報 | 帝京大学 八王子キャンパス|2026年度クラブ・サークル紹介 / 帝京大学スポーツ局|2026シーズン 帝京大学バーベルクラブ紹介 / Instagram:teikyo_barbell_club / X:@teikyo_barbell |
「やることがなかった」ことから始まった
和泉さんは、帝京大学 経済学部 経済学科の4年生。
大学入学後にバーベルクラブへ入り、ボディビルを始めました。
最初から、ボディビルに強い関心があったわけではありません。
「正直、最初はただ、やることがなかったんです。もともと野球をしていて、ウエイトトレーニングは好きだったので、バーベルクラブもありかな、と思って見学に来ました」
小学生の頃から続けていた野球では、高校1年生のときにイップスを経験しました。大学で野球を続けることは考えず、何か新しいことを始めようとしていたといいます。
バーベルクラブを見学すると、先輩からボディビルについて熱心に語られました。当時の和泉さんはどちらかといえば細身で、競技経験もありませんでした。
「もともと、ボディビルに興味があったわけではありません。ただ、筋肉のある身体はかっこいいなとは思っていました。見学に行ったら、先輩からボディビルについて語られて。それで、やってみようかなと思いました」
帝京大学バーベルクラブでは、部員の9割以上が初心者からスタートします。入部した時点で、大会出場を目指している学生ばかりではありません。
身体を変えたい、少し痩せたい、大学で何か新しいことを始めたい。
さまざまなきっかけで参加し、先輩や同級生と関わる中で、ボディビルやパワーリフティングに興味を持つ学生もいます。
和泉さんも、見学に訪れた際、先輩の鍛えた身体に憧れて競技を始めた一人です。
現在は上級生となり、新入生を迎える側になりました。
「いい身体をしていると、やっぱり『かっこいいな』って目が向くので。こっちに来てくれないかなって、遠くから思っています(笑)。自分もそうだったので、同じことを続けていきたいです」
かつて先輩の姿に憧れた部員が、トレーニングを重ね、今度は新しく訪れた学生の目標になる。
帝京大学バーベルクラブでは、競技へ踏み出すきっかけが、先輩から後輩へと受け継がれています。
努力した時間が、身体に残っていく
小学生の頃から続けてきた野球と、大学で出会ったボディビル。
和泉さんが二つの競技に違いを感じたのは、努力の結果の残り方でした。
「野球は、その一瞬で打てるか、打てないかが決まります。でも、ボディビルは、一度ついた筋肉が身体に残って、そこからさらに伸ばしていける。これまでやってきた競技とは違って、そこが楽しかったです」
日々の食事やトレーニングにかけた時間が、身体の変化として積み上がっていく。その手応えに、和泉さんは次第に夢中になりました。
競技を始めた頃は、身体を大きくすることばかり考えていた時期もあります。
入部時に70kg台だった体重は、1年生の12月頃には約110kgに。5か月から半年ほどで、30kg近く増量しました。
「当時は、とにかく食べればいいだろうと思っていました。
先輩からは『さすがに、やりすぎじゃない…?』と言われていたんですけど、同級生の間では『今は絶対に増やすべきだ!』という考えが広がっていて。みんなで一気に体重を増やしました」
周囲からも「身体が大きくなった」と言われ、変化を実感できたといいます。
ただ、筋肉だけでなく脂肪も大幅に増え、身体が重くなったことで、腰に痛みを感じるようにもなりました。
和泉さんは、身体を大きくする方法としてはやりすぎだったと、当時のことを振り返ります。
身体が変わっていく手応えを得るとともに、ただ体重を増やせばよいわけではないことも知った、最初の増量でした。
勝ちたいから、毎日の選択を積み重ねる
大会に向けて身体をつくるには、トレーニングだけでなく、日々の食事も管理する必要があります。
取材時の和泉さんは、大会に向けて食事量を減らしている時期でした。
朝起きると、一日分の食事を用意します。
1日約2合の米と、皮を取った鶏むね肉約700グラム、卵3個、納豆2個、オリーブオイル10グラム。食べるものと量を決め、4回に分けて食べていました。
もちろん、ほかのものを食べたくなることもあります。
「やっぱり、ほかのものを食べたいという気持ちはあります。でも、大会で勝ちたいというのが大きいので。そこで何を選んだかが最後につながって、それが原因で負けたら悔しい。だから、ぐっとこらえます」
食事だけではありません。決めたトレーニングを続けることも、常に楽しいわけではないと和泉さんは話します。
「自分は、ボディビルをやって、大会に出て勝ちたいという気持ちが一番大きくて取り組んでいます。正直、筋トレそのものが好きというより、『今日はこれをやらなければいけない』というような、義務に近い感覚ですね」
好きだから、毎日無理なく続けられるわけではない。
気持ちが乗らず、「今日は行かなくてもいいのではないか」と思う日にも、勝ちたいという目標に立ち返り、必要な行動を選んでいます。
競技を続ける中で、身体づくりとは別の苦しさもありました。
「一番しんどく感じたのは、ほかの人と比べてしまうことです。この競技は、どうしても身体の違いが見えてしまうので。精神的につらいというか…。」
競技経験を重ねるほど、相手の身体を見ただけで、自分に足りない部分も分かるようになっていきます。努力の積み重ねが身体に表れることは、ボディビルの魅力です。
その一方で身体には、ほかの選手との差や、自分に足りないものも表れます。
和泉さんは、トレーニングへ行きたくないと感じたときや、ほかの選手と比べて気持ちが安定しないときに、自分の弱さが見えると話していました。
目標に向かって日々を管理することは、ただ自分を厳しく律することではありません。
揺れる気持ちや弱さを自覚しながら、その日、自分が何を選ぶのか。
ボディビルの結果は、そうした小さな選択の先にあります。
みんなで増量し、みんなで減量し、みんなで負けた
和泉さんが初めて大会に出場したとき、思うような結果を残すことはできませんでした。
「初めて大会に出たときは、当時の自分としては、すごく時間をかけて臨んだつもりでした。やり切れていたわけではないのですが、それでもすぐに負けてしまって。『何なんだろう…』と思う時期もありました」
それまで続けてきたトレーニングにも、やる気が出なくなりました。
そこから抜け出せた理由を尋ねると、和泉さんは短く、こう答えました。
「みんなで負けたので」
同級生たちは、同じ時期に身体を大きくし、同じように大会へ向けて身体を絞り、同じ舞台に立ちました。
「一気にみんなで増量・減量して、みんなで大会に出て、みんなで負けて。
全員で『あれ?』となりました」
時間をかけて準備したのに、誰も思うような結果を残せなかった。
それでも、「来年、もう一回みんなで出よう」と話したことが、再び競技へ向かうきっかけになりました。
「もし一人で負けていたら、全然違ったと思います。周りで同級生が競技を続けていなかったら、自分もやっていなかったと思います」
ボディビルでは、同じ部の仲間であっても、ステージに立てば評価を競う相手になります。和泉さんは、選手同士の関係について、「全員がライバル同士であり、仲間」だと話します。
大会の舞台裏には、外から想像するような張り詰めた空気だけがあるわけではありません。
「ステージ裏は結構ワイワイしています。みんなで話したり、写真を撮ったり。」
同じステージでは、互いの身体を比べられる相手になる。
大会が終われば、負けた悔しさを共有し、次の挑戦へ向かう支えにもなる。
帝京大学バーベルクラブにおける仲間は、競技で勝つために越えたい相手であると同時に、競技を続ける理由にもなっています。
毎年結果を残しても、毎年「ダークホース」
帝京大学バーベルクラブらしさとは、どのようなところに表れているのでしょうか。
和泉さんから返ってきたのは、「いい意味でラフ」という言葉でした。
「少しやんちゃな感じもありつつ、みんな仲が良くて、ラフ。それが、うちらしさですね」
帝京大学バーベルクラブは、大会で毎年結果を残してきました。
それでも、他大学からは毎年「ダークホース」と呼ばれるそうです。
「毎年結果を残しているのに、毎年『ダークホース』と言われるんです。
『かませ犬みたいな態度で結果を残す』みたいな感じで、毎年やっています」
和泉さんは、そう冗談めかして笑います。
大会で結果を残していても、普段から強さを誇示するような雰囲気はありません。
肩肘を張らずに仲間と過ごす時間と、競技への本気。その両方が、帝京大学バーベルクラブの「いい意味でラフ」な空気を作っています。
週に一度の全体活動では、挨拶をしたあと、それぞれが自分のトレーニングへ移ります。
その場で部員同士がどのように関わっているのかを尋ねました。
「それぞれ、やりたいことがあってトレーニングに来ています。始まったら、上級生から『今、何しているの?』って話しかけに行くことが多いですね」
全員へ同じメニューを教えるのではなく、それぞれの目標を尊重しながら、上級生から自然に声をかける。
競技に向き合う時間は一人ひとりに委ねられていても、その隣には、気にかけてくれる仲間がいます。
主将になって見えた、部を続けるための仕事
和泉さんが入部した当時、バーベルクラブはまだサークルでした。
その後、2代前の代表が、それまでに積み重ねてきた競技実績や活動内容を大学へプレゼンし、部への昇格につなげたといいます。
部になったことで、役員の人数や仕事も少しずつ増えていきました。企業や他大学と関わる機会が生まれ、大学側とも定期的に話をするようになりました。
和泉さんは、1年生の頃から役員として活動し、前主将から指名を受けて主将に就任しました。主将に選ばれた理由を聞くと、早い時期から役員を務め、活動へ参加してきたことに加え、誰とでも関係を築きやすいところがあったからではないかと振り返ります。
主将になって初めて知ったのが、部を運営するために必要な仕事の多さでした。
「部員だったときは、自分で筋トレをして、横にいる人としゃべって、終わったら帰るという感じでした。でも、管理する側に回ると、『こんなに部活を運営するためにやることがあるんだ』と思いました」
会計の処理、大会へ出場するための申請、施設を使うための許可。
他大学と合同でポージング練習を行う際にも、事前の手続きが必要です。
部員として活動していた頃には見えていなかった仕事が、競技へ集中できる環境を支えていました。
「適当にやったら、部がなくなってしまうので」
自分たちの代で活動を途切れさせるのではなく、これまで続いてきた部を、次の代も活動できる状態で引き継ぎたい。
和泉さんが話す「つないでいきたい」という思いには、主将として目の前の仕事をこなすだけでなく、部が続いていくことへの責任が込められています。
サークルから部へと変わっていく過程を見てきた和泉さんにとって、現在の活動環境は、最初から当たり前に存在していたものではありません。
自分が競技へ取り組むだけでなく、部員が活動できる環境を守る。
主将になったことで、和泉さんの視線は、自分の身体や成績から、部全体へと広がっていきました。その責任は、申請や会計といった運営の仕事だけでなく、部員一人ひとりとの関わり方にも及んでいます。
支え合うことは、優しくすることだけではない
和泉さんが主将として大切にしているのは、部員が話しかけやすく、困ったときに相談できる環境です。
その背景には、野球をしていた頃に感じていた、厳しい上下関係への違和感があります。
「野球部は上下関係が厳しいこともあると思うんですけど、自分はその雰囲気があまり好きではありませんでした。だから、バーベルクラブでは、話しやすくて、話しかけやすい環境をつくりたいと思っています」
自分が明るく振る舞い、練習中に声をかける。後輩との関係では、相談されるのを待つのではなく、和泉さんからLINEを送るようにもなりました。
和泉さん自身、後輩だった頃は、先輩と仲が良くても、深い悩みを相談する直前で止まってしまうことがあったといいます。
「自分は先輩にあまり連絡できないタイプでした。仲が良くても、少し手前で止まってしまうところがあったので、今は先輩である自分から連絡するようにしています」
後輩へ連絡をしてみると、普段の活動だけでは見えていなかった悩みを打ち明けられることもありました。
話しかけやすい環境をつくることは、部員が抱えていることを知り、必要なときに支えられる関係をつくることでもあります。
ただ、主将として向き合う相手は、後輩だけではありません。
4年生になっても、同級生の全体活動への参加率がなかなか上がらない時期がありました。
和泉さん自身も含め、最上級生になった実感を持ちきれず、「活動に行かなくてもいい」と考えてしまうところがあったといいます。
「自分たちが最上級生になっても、まだ気持ちが1年生のままで、『行かなくてもいいでしょ』って、みんな思っているところがありました。
自分から、『俺らはもう4年生だからね』ということを話したこともあります」
同じ時期に入部し、一緒に増量し、減量し、初めての大会で負けた仲間です。弱さや失敗を共有してきた同級生だからこそ、主将として参加を求めることには、後輩へ声をかけるのとは異なる言いづらさがありました。
それでも、4年生は部を支える側になったことを伝えなければならない。
和泉さんは、親しい関係を保つことだけでなく、仲間や部のために必要な言葉を伝えることも選びました。
支え合うとは、いつも励ましたり、優しく寄り添ったりすることだけではありません。
関係が近いからこそ伝えにくいことにも向き合い、互いが担うべき責任を確かめる。
帝京大学バーベルクラブでは、そうした関係も、同じ時間を積み重ねる中で育っています。
自分の結果だけでなく、後輩たちの次の挑戦まで
2025年度、帝京大学バーベルクラブは全日本学生男子フィジークの団体で3位に入り、和泉さんも全日本学生男子ボディビルで15位に入賞しました。
2026年度に掲げる目標は、全日本学生ボディビル選手権での団体優勝です。
和泉さん自身も、前年より順位を上げたいという思いを持っています。学生として大会へ挑戦できる時間は限られているため、自分の弱点を見直し、トレーニングメニューも変えました。
主将としての一番の課題を尋ねると、こう答えてくれました。
「一番の課題は、後輩たちがしっかり大会に向けて準備できるようにすることと、来年以降につなげていくことです。後輩たちが何をやっているのかを聞いたり、サポートしたりする必要があると思っています」
競技を始めたばかりの部員は、身体のつくり方だけでなく、食事量を減らす中での気持ちの揺れや、ほかの選手と比べてしまう苦しさにも直面します。
こうした感覚には、自分で経験して初めて分かることもあります。
だからこそ、上級生である自分たちが大会へ向かう姿を見せることが大切だと、和泉さんは話します。
「3年生、4年生がしっかり減量して、身体を仕上げて、かっこよくなる。その姿を後輩に見せることが一番大事だと思っています」
和泉さんも、先輩の身体に憧れたことをきっかけに、競技を始めました。
先輩を見て一歩を踏み出した部員が、経験を重ね、今度は後輩に見られる側になる。
帝京大学バーベルクラブでは、競技への向き合い方が、先輩から後輩へと受け継がれています。
夢中になった先で、競技との距離を考える
和泉さんは、自分のことを、一つのことにのめり込みやすい性格だと話します。
一時期は、「この競技さえあれば、ほかには何もいらない」と思うほど、ボディビルだけに意識が向いていました。
そんな和泉さんの考え方を見直すきっかけになったのが、全日本大会を連覇した前主将の言葉でした。
前主将が引退する前に伝えたのは、自分にはボディビル以外にもやりたいことがあり、人生はこの競技だけではない、という趣旨の言葉でした。
「全日本大会を連覇している人だったので、聞いたときは『え? どういうことだろう?』と思いました」
競技で圧倒的な結果を残している人も、ボディビルだけを人生のすべてとは捉えていない。そのことが、当時の和泉さんには意外だったといいます。
4年生になり、就職活動や卒業後の生活について考えるようになった今、前主将の言葉を改めて受け止めています。
「自分は競技にのめり込みすぎて、この競技さえあれば、ほかはいらないという状態になっていました。でも、人生にはほかにも大切なことがあると思うようになりました」
競技への熱が失われたわけではありません。
全国の頂点を目指して身体をつくりながら、競技以外の人生にも目を向ける。
全力でのめり込んだからこそ、自分とボディビルとの関係を捉え直せるようになりました。
帝京大学バーベルクラブで先輩から後輩へ渡されるものは、トレーニングの方法や競技への向き合い方だけではありません。
一つのことに夢中になることと、それだけを人生のすべてにしないこと。
その両方を持つ姿勢も、先輩の言葉を通して受け継がれていました。
迷ったら、5秒で「やる」を選ぶ
和泉さんにとって、帝京大学バーベルクラブはどのような場所なのでしょうか。
返ってきた答えは、「転換点」でした。
「ここで、人生がいい意味で変わりました。野球をやってきた道を、そのまままっすぐ進むこともできたかもしれませんが、バーベルクラブに入ったことで一気に視野が広がりました。自分にとって、人生の転換点だと思います」
ボディビルの経験もなく、最初から大会を目指していたわけでもありません。それでも、先輩に競技について熱く語られ、「やってみようかな」と一歩を踏み出しました。
何かを始めたいと思いながら、なかなか動き出せない学生に向けて、和泉さんは自身が大切にしている考え方を教えてくれました。
「やりたいと思ったら、5秒経つ前にやるようにしています。迷うなら、やる方を選んだ方がいい。やらなければ何も変わらず、ずっとそこにいるだけです」
挑戦した先で、思うような結果が出ないこともあります。
それでも、何も始めなければ、経験を積み重ねる時間も、支え合える仲間との出会いも生まれません。
「やらなければゼロですけど、やれば何かが起こると思います。だから、とりあえずやる方を選ぶべきだと思います」
取材で伺った具体的な経験をもとに、帝京大学バーベルクラブの現場で育まれている力を、ガクチカワーク編集部が3つの言葉に整理しました。
ガクチカの現場|帝京大学バーベルクラブの現場で育まれる3つの力
| ガクチカの現場|帝京大学バーベルクラブの現場で培われる3つの力 |
|---|
| 💪勝ちたい未来から、今日の選択を決める力✨ 気分が乗らない日にも、その日の自分に必要な行動を選ぶ。 数か月先の目標から逆算し、小さな選択を積み重ねる力が培われます。 |
| 💪競う相手の存在を、挑戦を続ける支えに変える力✨ 仲間は、競う相手であると同時に、敗北のあとも挑戦を続ける支えになります。 競争の中でも、互いの存在を前へ進む力に変えていきます。 |
| 💪親しい相手にも、必要な言葉を届ける力✨ 関係が近いからこそ、言いづらくなることがあります。 それでも、相手や部のことを考え、今必要な言葉を伝える力が培われます。 |
帝京大学バーベルクラブ|2026年度の挑戦
※2026年7月の取材内容と公式情報をもとに整理しています
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 今季の目標 | 全日本学生選手権 団体優勝 |
| 直近の大会予定 | 2026年9月19日(土) 関東学生フィジーク選手権大会 2026年9月20日(日) 関東学生ボディビル選手権大会 2026年9月27日(日) 全日本学生選手権大会 |
| 主な実績 | 〈2025年度〉 ・🥉 全日本学生男子フィジーク 団体3位 ・🏆 全日本学生フィジーク 優勝 ・全日本学生フィジーク 170cm以下級 7位 ・全日本学生フィジーク 176cm超級 9位 ・全日本男子ボディビル 15位 ・🏆 関東学生フィジーク 優勝 〈2024年度〉 ・🏆 全日本学生パワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝 ・🏆 全日本学生フィジーク 優勝 〈2021年度〉 ・🥈 全日本学生ボディビル 準優勝 ・🏆 関東学生ボディビル大会 優勝 |
取材を終えて:「みんなで負けたので」の先にあったもの
「みんなで負けたので」
初めての大会後、なぜもう一度競技へ向かうことができたのかを尋ねたとき、和泉さんから返ってきた言葉です。
短い言葉でしたが、和泉さんのお話に何度も登場した「みんな」という言葉と重なり、強く心に残りました。
厳しい食事管理やトレーニング、ほかの選手と比べてしまう苦しさ、思うような結果が出なかった経験。そうしたお話を伺っているのに、取材の場には張り詰めた空気がありませんでした。和泉さんの言葉や佇まいには、こちらが身構えずにいられる柔らかさがありました。
後輩が相談してくるのを待たず、自分から声をかける。
親しい同級生にも、主将として必要なことを伝える。
和泉さんが大切にしている「話しかけやすい環境」は、そうしたご本人の人との関わり方からも生まれているように感じました。
支え合うとは、いつも優しく励ますことだけではありません。
同じ目標に向かい、失敗を共有し、ときには近い相手とも向き合う。
そうして過ごした時間が、一人では続けられなかった挑戦を支え、今のクラブの空気を育てているのだと思います。
努力した時間が身体に残るように、人と過ごした時間も、その人の考え方や行動の中に残っていきます。
皆さん自身を今支えている力は、誰と過ごした時間の中で育ったものでしょうか?
取材協力への御礼
大会に向けた大切な時期に、取材のお時間をいただいた和泉慧さんに、心より御礼申し上げます。
迷いや失敗も飾ることなく、和泉さんご自身の言葉で率直にお話しくださったからこそ、個人競技の中で仲間が果たしている役割や、支えられてきた人が、やがて後輩や部を支える側へと変わっていく姿を知ることができました。
お話を伺いながら、和泉さんが「いい意味でラフ」と表現されていたクラブの空気には、和泉さん自身の人との関わり方が表れているように感じました。
後輩には自分から声をかけ、親しい同級生にも必要なことを伝える。
そうした一つひとつの関わりが、話しやすさと競技への本気が両立する、今の帝京大学バーベルクラブをつくっているのだと思います。
和泉さんのお話から、今のクラブに流れる温かさと強さが、どのように育ってきたのかを少し知ることができたように思います。
大切なお話を聞かせてくださり、本当にありがとうございました。
左:帝京大学バーベルクラブ 主将・和泉慧さん
右:帝京大学バーベルクラブ創設者・高橋豊友さん
取材当日は、帝京大学バーベルクラブ創設者の高橋豊友さんにもお越しいただきました。
クラブの始まりを知る高橋さんと、現在の活動を担う和泉さんが同じ場にいらしたことからも、活動が人から人へ受け継がれてきた時間を感じました。
高橋さんにも、ご多忙の中、取材にご同席いただきましたことを心より御礼申し上げます。
9月の大会には、ガクチカワーク編集部全員で応援に伺います。
取材で伺った皆さんの挑戦を、今度は会場で直接応援できることを楽しみにしています。
取材日:2026年7月30日(木)
ガクチカワークから、学生の皆さんへ
就活のために、学生時代にしかできないことを諦めなくていい。
学生団体や部活動、研究、留学、インターン、アルバイトなど、学生の皆さん一人ひとりが積み重ねてきた経験には、まだ言葉になっていない価値があります。
今ある経験も、これから踏み出す一歩も、あなただけの「学生時代に力を注いだこと」につながっていきます。
ガクチカワークでは、「ガクチカの現場」のほかにも、社長の学生時代をたどるインタビューや、ガクチカの見つけ方・書き方、インターンの選び方、学生自身のリアルな経験など、自分のこれからを考えるヒントになるコンテンツをお届けしています。
今の経験をどう捉えたらいいのか。
これから何をしてみたいのか。
気になるテーマから、ぜひのぞいてみてくださいね。
ガクチカワーク編集部
「ガクチカの現場」では、実際に学生が活動する場所を訪れ、そこで交わした対話から、本人たちもまだ言葉にしていない学びや葛藤、変化を伝えています。
活動を紹介して終わるのではなく、学生たちの経験にある価値を言葉にし、読者や社会へ届けます。そして記事の公開後も、その団体や学生の挑戦を見守り、応援していきます。
企画・取材調整:坂本悠人(ガクチカワーク学生編集メンバー)
取材・執筆・編集:ガクチカワーク編集部
監修:ルーキーワークス株式会社
