前回の記事では、自分にしかないガクチカを見つけるために、まず「心が動いた場面」を書き出してみよう、というお話をしました。
うれしかったこと。
悔しかったこと。
モヤモヤしたこと。
放っておけなかったこと。
なぜか今も覚えていること。
そうした感情の中には、あなたが大切にしていることが隠れています。
ただ、心が動いた場面を書き出しただけでは、まだガクチカとしては少しぼんやりしています。
「アルバイトで新人スタッフをサポートした」
「グループワークで進め方を工夫した」
「サークル活動でメンバー同士の連携を意識した」
このように出来事を思い出せても、いざ文章にしようとすると、
「結局、何を書けばいいのだろう」
「どこが自分らしいのだろう」
「ただ普通のことをしただけに見えそう」
と感じることもあるかもしれません。
そこで今回は、書き出した経験を少し細かく分解していきます。
経験を分解することで、
そのとき自分が何に気づき、
なぜ行動し、
どんな工夫をして、
何を大切にしていたのかが見えやすくなります。
ガクチカは、出来事をそのまま書くだけではなく、
その経験の中にある「自分の考え方」や「行動の理由」を伝えるものです。
そのための準備として、まずは経験をひとつずつ整理してみましょう。
経験は、そのままだと「ただの出来事」に見えやすい
たとえば、次のような経験があったとします。
アルバイト先で新人スタッフに仕事を教えた。
これも大切な経験です。しかし、この一文だけだと、読み手にはまだその人らしさが伝わりません。
- なぜ新人スタッフを気にかけたのか。
- どんな状況で困っていたのか。
- 自分は何に気づいたのか。
- どんな工夫をしたのか。
- その結果、何が変わったのか。
そこまで見えてくると、同じ「新人スタッフをサポートした」という経験でも、その人らしさが出てきます。
たとえば、
自分が新人だった頃、忙しい時間帯に何を聞いていいかわからず、不安を感じた経験がありました。だからこそ、新人スタッフが同じように困らないように、よくある質問をメモにまとめ、業務前に確認できるようにしました。
ここまで整理すると、単に「仕事を教えた」だけではなく、
- 相手の不安に気づける
- 自分の経験をもとに改善できる
- 周囲が動きやすい環境をつくろうとする
という一面が見えてきます。
つまり、経験はそのままでは「出来事」ですが、分解することで「自分らしさを伝える材料」になります。
「何をしたか」より前に、「何に気づいたか」を見る
ガクチカを書こうとすると、どうしても「自分が何をしたか」に意識が向きます。
もちろん、行動は大切です。
でも、その前に見ておきたいのが、**「自分は何に気づいたのか」**という部分です。
人は、何かに気づいたから行動します。
- 困っている人がいると気づいた。
- 今のやり方ではうまくいかないと感じた。
- 一部の人だけに負担が偏っていると感じた。
- もっとわかりやすくできるのではと思った。
- このままだと誰かが不安になるかもしれないと感じた。
こうした気づきには、その人の視点が表れます。
たとえば、同じグループワークでも、進行が止まっていることに気づく人もいれば、発言できていない人がいることに気づく人もいます。
役割分担が曖昧なことに気づく人もいれば、資料の伝わりにくさに気づく人もいます。
どこに気づくかは、人によって違います。
だからこそ、「何をしたか」だけではなく、「何に気づいたのか」を振り返ることが大切です。
あなたが何に気づいたのか。
そこには、あなたが普段からどんなことを見ているのか、何を大切にしているのかが表れています。
「なぜ動いたのか」を見ると、自分の価値観が見えてくる
経験を分解するときに、もうひとつ大切なのが、「なぜ自分はそこで動いたのか」 を考えることです。
たとえば、グループワークで話し合いが進まなかったとき、自分から進行役を引き受けたとします。
その行動だけを見ると、
グループワークで進行役を担当した。
となります。
しかし、そこで終わらせずに、なぜ自分は進行役を引き受けたのかを考えてみます。
- 全員が話しやすい状態をつくりたかったから。
- 誰か一人に負担が偏るのが気になったから。
- 曖昧なまま進むと、後で困ると思ったから。
- チームで納得して進めることを大切にしたかったから。
このように「なぜ」を掘っていくと、行動の奥にある価値観が見えてきます。
ガクチカで伝えたいのは、単なる行動の報告ではありません。
その行動を通じて、自分がどんなことに気づき、何を大切にして、どのように周囲と関わってきたのか。
そこが伝わると、読み手はあなたという人をイメージしやすくなります。
【📝ワーク1】経験を分解する5つの視点
では、実際に自分の経験を分解してみましょう。
今回のワークでは、2本目で書き出した「心が動いた場面」の中から、ひとつ選んで整理していきます。
まだガクチカとして使えるかどうかは判断しなくて大丈夫です。
まずは、気になっている経験をひとつ選び、次の5つの視点で分解してみましょう。
1. どんな状況だったか
まずは、その経験が起きた状況を整理します。
- いつ頃の出来事だったか
- どこで起きたことか
- 誰と関わっていたか
- どんな役割を担っていたか
- どんな流れの中で起きたことか
ここでは、まだ立派に書こうとしなくて大丈夫です。
たとえば、
大学2年生の頃、飲食店でアルバイトをしていた。週末の夜は特に忙しく、新人スタッフが入ると、わからないことを聞く余裕がないまま業務が進んでしまうことがあった。
このように、読み手が状況をイメージできる程度に整理してみます。
状況を整理することで、その後の「気づき」や「行動」が伝わりやすくなります。
2. 何に気づいたか
次に、その状況の中で自分が何に気づいたのかを書き出します。
- 誰が困っていたのか
- 何がうまくいっていなかったのか
- どんな違和感があったのか
- このままだと何が起きそうだと思ったのか
- 自分は何が気になったのか
ここが、自分らしさにつながる大切な部分です。
たとえば、
新人スタッフが忙しい時間帯に質問できず、不安そうに動いていることに気づいた。自分も新人の頃、同じように何を聞いていいかわからず困った経験があったため、このままだと新人が萎縮してしまうのではないかと感じた。
このように、「何が起きていたか」だけではなく、
「自分はそれをどう受け取ったのか」まで書いてみます。
3. なぜ動こうと思ったか
次に、なぜ自分が動こうと思ったのかを考えます。
- 放っておけなかったのはなぜか
- 何を変えたいと思ったのか
- どんな状態にしたいと思ったのか
- 自分のどんな経験が関係していたのか
- 何を大切にしたかったのか
ここでは、行動の理由を探します。
たとえば、
自分自身が新人時代に不安を感じた経験があったため、同じように困る人を減らしたいと思った。また、新人が安心して動けるようになれば、店舗全体もよりスムーズに回ると考えた。
このように整理すると、行動の背景にある思いや価値観が見えやすくなります。
4. 実際に何をしたか
次に、自分が実際に取った行動を書き出します。
- 誰に働きかけたか
- どんな工夫をしたか
- 何を変えたか
- どんな順番で進めたか
- どんなことを意識したか
ここでは、できるだけ具体的に書くことが大切です。
たとえば、
よくある質問や間違いやすい作業をメモにまとめ、業務前に新人スタッフと一緒に確認するようにした。また、忙しい時間帯でも声をかけやすいように、自分から「わからないことがあったらすぐ聞いてね」と伝えるようにした。
「頑張った」だけではなく、どんな行動をしたのかまで書くと、読み手に伝わりやすくなります。
5. 何が変わったか
最後に、その行動によって何が変わったのかを整理します。
- 相手にどんな変化があったか
- チームや場にどんな変化があったか
- 自分自身にどんな気づきがあったか
- 周囲からどんな反応があったか
- 次に活かせる学びは何だったか
ここで大切なのは、大きな成果を無理に作ることではありません。
売上が大幅に上がった。
大会で優勝した。
表彰された。
そうした結果がなくても大丈夫です。
たとえば、
新人スタッフが自分から質問しやすくなり、業務中の不安が少しずつ減っていった。自分自身も、相手が安心して動ける環境をつくることにやりがいを感じるのだと気づいた。
このような変化でも、十分に意味があります。
ガクチカでは、結果の大きさだけでなく、
その経験を通じて何を学び、自分のどんな一面に気づいたのかも大切です。
【📝ワーク2】:2本目で書き出した経験を分解してみよう
それでは、実際にひとつ経験を選んで、次の項目に沿って書き出してみましょう。
1. 心が動いた場面
まず、2本目で書き出した中から、気になる場面をひとつ選びます。
例:アルバイト先で新人スタッフが困っている様子を見て、放っておけなかった。
2. どんな状況だったか
その出来事が起きた背景を書いてみましょう。
- いつのことか
- どこでの出来事か
- 誰が関わっていたか
- 自分はどんな立場だったか
3. 何に気づいたか
その場面で、自分は何に気づいたのでしょうか。
- 誰が困っていたか
- 何がうまくいっていなかったか
- 何に違和感を持ったか
- このままだとどうなると思ったか
4. なぜ動こうと思ったか
自分が行動した理由を考えてみましょう。
- なぜ気になったのか
- なぜ放っておけなかったのか
- どんな状態にしたいと思ったのか
- 自分のどんな経験や思いが関係していたのか
5. 実際に何をしたか
自分が取った行動を具体的に書いてみましょう。
- 誰に声をかけたか
- 何を工夫したか
- どんな順番で進めたか
- 何を意識して行動したか
6. 何が変わったか
その行動によって、どんな変化があったでしょうか。
- 相手に変化はあったか
- チームや場に変化はあったか
- 自分自身に気づきはあったか
- 周囲から反応はあったか
7. そこから見えた自分らしさ
最後に、その経験から見えてきた自分らしさを考えてみましょう。
たとえば、
- 相手の不安に気づきやすい
- チームが動きやすい状態をつくりたい
- わかりにくいものを整理するのが得意
- 誰かだけに負担が偏る状況を放っておけない
- 自分の経験をもとに、周囲のために工夫できる
- 小さな違和感をそのままにせず、改善しようとする
まだきれいな言葉になっていなくても大丈夫です。
「自分はこういう場面で動きやすいのかもしれない」
「こういうことを大切にしているのかもしれない」
という仮の言葉で構いません。
分解できると、自分のガクチカが見えてくる
経験を分解すると、ガクチカに必要な材料が少しずつ見えてきます。
たとえば、先ほどのアルバイトの例であれば、次のように整理できます。
【状況】
飲食店のアルバイトで、忙しい時間帯に新人スタッフが質問しづらそうにしていた。
【気づき】
自分も新人の頃に不安を感じた経験があり、このままだと新人が萎縮してしまうのではないかと感じた。
【行動の理由】
同じように困る人を減らしたいと思った。また、新人が安心して動ける環境をつくりたいと考えた。
【行動】
よくある質問や間違いやすい作業をメモにまとめ、業務前に一緒に確認した。忙しい時間帯でも声をかけやすいように、自分から声をかけた。
【変化】
新人スタッフが少しずつ質問しやすくなり、安心して動けるようになった。自分自身も、相手が動きやすい環境をつくることにやりがいを感じると気づいた。
ここまで整理できると、まだ文章として完成していなくても、ガクチカの核がかなり見えてきます。
大切なのは、最初から完璧な文章にしようとしないことです。
まずは、自分の経験を分解する。
その中で、自分の気づきや行動の理由を見つける。
そして、自分らしさにつながる言葉を少しずつ拾っていく。
この順番で進めることで、ガクチカは自分の経験に根ざした言葉になっていきます。
まとめ:経験を分解すると、「自分らしさ」が見えてくる
ガクチカを書くためには、経験をただ思い出すだけではなく、その経験の中身を少し細かく見ていくことが大切です。
分解していくと、一見普通に見える経験の中にも、あなたらしい視点や行動の理由が見えてきます。
ガクチカは、経験の大きさを競うものではありません。
自分が何に気づき、なぜ動き、何を大切にしてきたのかを伝えるものです。
次回は、今回分解した経験をもとに、その行動の奥にある「自分が大切にしていること」を、より具体的な言葉にしていきます。