前回の記事では、ガクチカは「すごい経験」からではなく、あなたが何を感じ、なぜ動き、何を大切にしてきたかから生まれる、というお話をしました。

では、自分が何を大切にしているのかは、どうすれば見つかるのでしょうか。

いきなり「あなたの価値観は何ですか?」と聞かれても、すぐに答えられる人は多くありません。

「人の役に立ちたい」
「成長したい」
「チームで頑張りたい」

そうした言葉は思い浮かぶかもしれません。

もちろん、それも大切な言葉です。
しかし、そのままだと少し広く、誰にでも当てはまる言葉にも見えてしまいます。
自分にしかないガクチカに近づくためには、もう一歩だけ深く見ていく必要があります。

大切なのは、きれいな言葉を探すことではありません。
自分の過去を振り返りながら、

「なぜ、あのときうれしかったのか」
「なぜ、あの場面でモヤモヤしたのか」
「なぜ、あの出来事が今も記憶に残っているのか」

を見ていくことです。

感情が動いた場面には、あなたが大切にしていることが表れています。

感情は、自分を知るための手がかりになる

ガクチカを書くとき、多くの人はまず「何をしたか」を整理しようとします。

アルバイトをした。
サークルで活動した。
ゼミで発表した。
資格の勉強をした。
インターンに参加した。

もちろん、出来事を整理することは大切です。

ただ、「何をしたか」だけを見ていると、自分らしさが見えにくくなることがあります。
なぜなら、同じような経験をしている人はたくさんいるからです。

たとえば、飲食店でアルバイトをしていた学生は、きっと多くいます。
でも、その中で何を感じ、どこに意識を向け、どんな行動をしていたかは、人によって違います。

お客様との会話にやりがいを感じていた人。
忙しい時間帯にお店全体がうまく回ることに面白さを感じていた人。
新人スタッフが困らないように、自分から声をかけていた人。
ミスが起きやすい作業に気づき、改善しようとしていた人。

経験の名前は同じでも、そこで動いていた感情や意識は一人ひとり違います。

だからこそ、まず見てほしいのは「経験の大きさ」ではなく、その経験の中で、自分の心がどこで動いたのかということです。

うれしさの奥には、「大切にしていること」がある

たとえば、誰かから「ありがとう」と言われて、すごくうれしかった経験があるとします。
そのとき、ただ「感謝されてうれしかった」で終わらせずに、少しだけ掘ってみます。

なぜ、そんなにうれしかったのでしょうか?

自分の工夫に気づいてもらえたから。
相手の役に立てた実感があったから。
困っていた人が安心した表情を見せてくれたから。
自分がやってきたことが、ちゃんと意味のあることだと思えたから。

このように考えていくと、そのうれしさの奥に、自分が大切にしていることが見えてきます。

たとえば、

「相手が安心できる状態をつくりたい」
「目立たなくても、誰かの役に立てることがうれしい」
「自分の工夫で状況が少し良くなることにやりがいを感じる」

というように。

これは、単なる感情ではありません。
あなたがどんな場面で力を発揮しやすいのかを知るための大切な手がかりです。

モヤモヤや違和感にも、自分らしさが隠れている

ガクチカの材料になる感情は、前向きなものだけではありません。

モヤモヤしたこと。
納得できなかったこと。
悔しかったこと。
放っておけなかったこと。

こうした感情にも、自分らしさが表れます。

たとえば、グループワークで一部の人だけに負担が偏っていることにモヤモヤしたとします。
その背景には、

「みんなが納得して進める状態をつくりたい」
「誰かだけが無理をする状況に違和感がある」
「役割が曖昧なまま進むと、チームがうまくいかないと感じる」

という思いがあるかもしれません。
あるいは、アルバイト先で新人スタッフが不安そうにしているのを見て、放っておけなかったとします。
その背景には、

「自分も最初は不安だったから、同じ思いをしてほしくない」
「わからないことを聞きやすい雰囲気をつくりたい」
「安心して動ける環境があると、人は力を出しやすいと思っている」

という考えがあるかもしれません。

モヤモヤや違和感は、扱いにくい感情に思えるかもしれません。
でも、それは「自分が何を大切にしているからこそ、引っかかったのか」を知る入口になります。
「なんとなく嫌だった」「なんとなく気になった」で終わらせずに、少しだけ立ち止まってみる。

そこには、自分の判断基準や、大切にしたい環境のヒントが隠れています。

感情を掘ると、「なぜ動いたのか」が見えてくる

ガクチカで大切なのは、「何をしたか」だけではありません。

なぜ、その行動をしたのか。
なぜ、そこまで頑張れたのか。
なぜ、その状況を変えたいと思ったのか。

この「なぜ」が見えてくると、ガクチカは一気に自分らしいものになります。

たとえば、次のような経験があったとします。

アルバイト先で新人スタッフが業務を覚えづらそうにしていたため、よくある質問をメモにまとめ、共有した。

これだけでも行動は伝わります。
しかし、ここに「なぜそうしたのか?」が加わると、一気にその人らしさが見えやすくなります。

自分自身も新人の頃、忙しい時間帯に何を聞いてよいかわからず不安を感じた経験がありました。そのため、同じように困る人を少しでも減らしたいと思い、よくある質問をメモにまとめました。

このように書くと、単に「メモを作った人」ではなく、

  • 相手の不安に気づける人
  • 自分の経験をもとに、周囲のために動ける人
  • 働きやすい環境をつくろうとする人

という一面が伝わります。

行動の背景にある感情や価値観が見えると、経験はただの出来事ではなくなります。
その人がどんなことを大切にし、どんな場面で自然に動ける人なのかを伝える材料になります。

【📝ワーク】:心が動いた場面を振り返ってみよう

このワークは、ガクチカのネタを無理に探すためのものではありません。
自分がどんな場面で心を動かし、何を大切にしてきたのかを見つけるためのものです。
思い出せる範囲で、短い言葉から書いてみてください。

1. 心が動いた場面を書き出す

まずは、学生生活の中で心が動いた場面を思い出してみましょう。

たとえば、こんな場面です。

  • うれしかったこと
  • 悔しかったこと
  • モヤモヤしたこと
  • 放っておけなかったこと
  • 夢中になれたこと
  • なぜか今も覚えていること
  • 誰かのために自然と動いたこと
  • もっと良くしたいと思ったこと

大きな出来事でなくても構いません。むしろ、日常の中の小さな場面の方が自分らしさが見つかることもあります。

2. そのときの感情を言葉にする

次に、その場面で自分が何を感じたのかを書いてみます。

「うれしかった」
「悔しかった」
「不安だった」
「気になった」
「納得できなかった」
「安心した」
「もっとできると思った」
「役に立ててよかった」

感情は、きれいに整理されていなくて大丈夫です。

「なんとなくモヤモヤした」
「うまく言えないけれど気になった」

という書き方でも構いません。

3. なぜ、その感情が生まれたのかを考える

感情を書き出したら、次に「なぜそう感じたのか」を考えます。

たとえば、

  • なぜ、うれしかったのか
  • なぜ、悔しかったのか
  • なぜ、放っておけなかったのか
  • なぜ、そこまで気になったのか
  • なぜ、もっと良くしたいと思ったのか

ここで大切なのは、正しい答えを出すことではありません。

自分の中にある理由を、少しずつ言葉にしていくことです。

4. そこにある「大切にしていたこと」を探す

最後に、その感情の奥にある「自分が大切にしていたこと」 を考えてみます。

たとえば、

  • 相手が安心できること
  • チームで納得して進めること
  • 自分なりに工夫すること
  • 誰かだけに負担が偏らないこと
  • わかりにくいものを、わかりやすくすること
  • 目の前の人にきちんと向き合うこと
  • 最後まで責任を持つこと
  • もっと良い状態をつくろうとすること

こうした言葉が出てきたら、それはあなたのガクチカにつながる大切な材料になります。

ワークで出てきた言葉は、何につながるのか

ここで見つけた感情や価値観は、これからガクチカを書くうえでの土台になります。

その経験の中で、

  • 自分は何に気づいたのか。
  • なぜ行動したのか。
  • どんなことを大切にしていたのか。
  • その結果、どんな変化があったのか。
  • そして、その経験から自分のどんな一面が見えたのか。

ここまで整理できると、ガクチカは「経験の説明」ではなく、「自分という人を伝える文章」になっていきます。
また、この作業はガクチカだけで終わるものではありません。

  • 自分が何にうれしさを感じるのか。
  • どんな状況に違和感を持つのか。
  • どんな環境で力を発揮しやすいのか。
  • どんな人やチームと関わると、自分らしく動けるのか。

そうしたことが見えてくると、自己PRや志望動機、企業選びの軸を考えるときにも役立ちます。

ガクチカを書くことは、過去の経験をまとめる作業であると同時に、
これから自分がどんな場所で力を発揮したいのかを考える作業でもあります。

まとめ:感情をたどると、自分の価値観が見えてくる

自分が何を大切にしているのかは、最初からはっきり見えるものではありません。
だからこそ、まずは心が動いた場面を振り返ってみることが大切です。
その感情の奥には、あなたが大切にしてきたことが隠れています。
そして、それは「自分にしかないガクチカ」をつくるための大切な手がかりになります。

次回は、今回見つけた心が動いた場面をもとに、経験をどのように分解し、「自分が何に気づき、どう動いたのか」を整理する方法について考えていきます。