短所を聞かれたから、自分の欠点を正直に話した。
「なぜこの会社を志望したのですか」と聞かれたけれど、まだ本当に入りたいかはわからなかったから、うまく熱意を語れなかった。
自分の経験を大きく見せることにも抵抗があって、できたことより、できなかったことの方を丁寧に説明した。
そして、選考に落ちた。
一方で、周りを見ると、自信がありそうに話せる人や、自分の経験をうまくアピールできる人が、次々と選考を通過していく。
SNSには、「面接では多少盛った方がいい」「企業が求めている答えを言えばいい」という言葉も流れてくる。
そんな様子を見ていると、思ってしまうかもしれません。
就活って、正直者が損をする場所なのではないか。
真面目に答えている自分の方が、間違っているのではないか。
就活で「正直者が損をする」と感じる瞬間
最初に、きれいごとではなく考えてみたいことがあります。
就活では、正直な人が不利になる場面は、本当にないのでしょうか。
残念ながら、「絶対にない」とは言い切れません。
就活の選考では、限られた時間と情報の中で、自分がどんな人なのかを相手に伝える必要があります。
本当は責任感があり、周囲のことをよく考えて行動している人でも、そのことを言葉にできなければ、面接官には伝わりません。
反対に、自分の経験を整理し、自信を持って話せる人は、短い面接の中でも印象に残りやすくなります。
実際に持っている力だけではなく、自分のことを伝える力も、選考結果に影響する。
そこに、就活の難しさがあります。
そして、真面目な人ほど、この「自分を伝える」という行為に戸惑うことがあります。
「大したことではないのに、アピールしていいのだろうか」
「少しでもよく見せようとしたら、嘘になるのではないか」
「短所を聞かれたのだから、本当に悪いところを答えるべきなのではないか」
質問にきちんと答えようとするからこそ、自分に厳しくなり、必要以上に評価を下げる伝え方をしてしまう。
その横で、堂々と自分をアピールする人が選考を通っていけば、「正直者が損をしている」と感じるのも、無理はありません。
「落ちた」は、あなたへの点数ではない
面接で落とされると、自分よりも、要領よく話せる人の方が評価されたように感じます。
その結果、
「真面目に生きてきたことには、意味がなかったのか」
「結局、口がうまい人の方が得をするのか」
「自分も、もっと計算高くならなければいけないのか」
と考えてしまうことがあります。
でも、選考結果は、その人の人間性に点数をつけたものではありません。
面接官が見ているのは、その時、その場所で、その人から受け取れた情報です。
あなたが持っているもののすべてが、見えているわけではありません。
- どれだけ誠実に人と向き合ってきたか。
- 誰も見ていないところで、どれだけ丁寧に取り組んできたか。
- 言葉にはしなかったけれど、周囲のために何を考えていたか。
そうしたものが、短い面接だけでは伝わらないこともあります。
だからといって、伝わらなかったものに、価値がないわけではありません。
ただ、相手に届く形になっていなかった。
それだけの可能性も、あります。
正直に話すことと、すべてをそのまま話すことは違う
「正直でいたい」と思う人にとって、自分をよく見せることは、どこか不誠実な行為に感じられるかもしれません。
けれど、正直に話すことと、頭に浮かんだことをすべてそのまま話すことは、同じではありません。
たとえば、面接で「あなたの短所を教えてください」と聞かれたとします。
そこで、
私は優柔不断で、判断が遅く、周りに迷惑をかけてしまうことがあります。
とだけ答えれば、相手には「判断が遅い人」という情報が強く残ります。
一方で、
私は、周囲への影響を考えすぎて、判断に時間をかけてしまうことがあります。そのため最近は、考える期限を決め、必要な情報がそろった段階で一度判断するようにしています。
と答えることもできます。
どちらも、嘘をついているわけではありません。
後者は、自分の短所だけでなく、その背景や、向き合い方まで含めて伝えています。
事実を隠しているのではなく、相手が自分を理解できるように、情報を整理しているのです。
自分の経験を伝えるときも同じです。
「私はリーダーをしたことがありません」で終わらせるのではなく、
前に立って引っ張る役割ではありませんでしたが、話し合いで発言できていない人に声をかけたり、意見を整理したりすることは多くありました。
と伝えることができます。
肩書はなくても、実際にしていたことは、ある。
それを言葉にすることは、経験を盛ることではありません。
自分の中にあるものを、相手に見える形にすることです。
「盛る」のではなく、自分を翻訳する
就活ではよく、「見せ方が大事」と言われます。
この言葉に違和感を持つ人もいるでしょう。
「見せ方」と聞くと、実際の自分とは違う人物を演じるように感じるからです。
でも、ここで一度だけ、立ち止まってみたいことがあります。
あなたが「ズル賢い」「要領がいい」と感じているもの。
それは、本当に一つのことを指しているでしょうか?
よく見ると、そこには性質の違う二つが、混ざっているのかもしれません。
- ルールを知っていて、自分を"伝わる形"にできること
- 事実を曲げて、自分を大きく見せること
この2つは、まるで別物です。
そして、あなたが「損をしている」と感じるとき、しんどさの多くは、たぶん①のほうから来ています。
①は、嘘ではありません。むしろ、自分のことを知らない相手に、自分を理解してもらうための「翻訳」に近いものです。
自分にとっては当たり前だった行動も、相手には見えていません。
「言わなくてもわかってくれるだろう」と思っていても、面接官は、あなたの日常を見てきたわけではありません。
- アルバイトで、困っている後輩にいつも声をかけていたこと。
- グループワークで、話がずれてきたときに、論点を整理していたこと。
- 任された仕事が終わった後も、抜け漏れがないか確認していたこと。
自分では「普通のこと」と思っているかもしれません。
けれど、その普通の行動の中に、あなたの誠実さや責任感が表れていることがあります。
それを**「大したことではありません」と自分で消してしまえば、相手には届きません。**
事実以上に大きく見せる必要は、ありません。
ただ、事実以下に小さくする必要もないのです。
それでも、「理不尽だ」と感じる気持ちは残る
自分を伝える力が必要だとわかっても、すべての違和感が消えるわけではありません。
- 話すのが得意な人。
- 早くから就活の情報を集めていた人。
- 面接で何を求められているかを理解している人。
- 周囲に相談できる大人や先輩がいる人。
就活では、そうした人の方が動きやすいことがあります。
同じように努力してきたとしても、情報や経験、環境の違いによって、最初から差がついているように見えることもあります。
「そんなことまで、自分で調べなければいけないのか」
「知らなかった自分が、悪いのか」
「人として誠実であることより、立ち回りのうまさの方が、評価されるのか」
そう感じるのは、おかしなことではありません。
就活の仕組みに対して抱いた違和感を、すべて「自分の努力不足」に置き換えなくてもいいと思います。
うまく言葉にできなかったことと、あなたが何も考えてこなかったことは、違います。
選考に通らなかったことと、あなたの真面目さに価値がないことも、違います。
正直さを捨てなければ、就活では勝てないのか
正直者が損をするのか?
この問いには、おそらく一つの答えはありません。
正直に答えたことで、選考に落ちることも、あるかもしれません。
反対に、取り繕わずに話したことで、その人を理解しようとしてくれる企業に出会えることもあります。
では、事実を曲げて、大きく見せて勝った人は、得をしたのでしょうか?
その瞬間だけを見れば、勝っています。
ここで「でも最後は正直者が報われる」と言うのは、たぶん嘘になります。
世の中は、そんなにきれいにはできていません。
ただ、一つだけ言えることがあります。
- 「できます」と言って入った仕事。
- 「好きです」と言って入った会社。
盛った自分で入った場所では、その"設定"を、入ったあとも演じ続けることになります。
演じ続けなければならない環境で、後から苦しくなることも、あるのかもしれません。
それが本当に「得」だったのかは、その人が数年後に、どう感じるか次第です。
ここにも、正解はありません。
だからといって、何も工夫せず、「わかる人だけわかってくれればいい」と閉じてしまうと、本当は合っていたはずの企業にも、自分のことが伝わらない可能性があります。
正直さを、捨てる必要はない。
でも、正直な自分を相手に届けるための言葉は、探してもいい。
その2つは、両立するのではないでしょうか。
あなたが守りたい「正直さ」は、どんなものだろう
「就活で正直者は損をするのか」と考えたとき、自分にも問いかけてみてください。
Q:あなたは、何をすることに「嘘をついている」と感じるのでしょうか?
- 自分のよいところを話すこと。
- 経験をわかりやすく整理すること。
- 相手に合わせて、言葉を選ぶこと。
- まだ志望度が固まっていない企業に、興味を持った点を伝えること。
Q:それらは本当に、すべて不誠実な行為なのでしょうか?
反対に、どうしても言いたくないことや、曲げたくないことは、何でしょうか。
もしかすると、あなたが守りたいのは、単に「何でも正直に話すこと」ではないのかもしれません。
- 自分がしてきたことを、していないことにしない。
- 思ってもいないことを、本心のように語らない。
- 誰かを押しのけてまで、自分をよく見せようとしない。
- 自分で自分を嫌いになるような選択を、しない。
そうした、自分なりの誠実さなのかもしれません。
就活を通して少し言葉がうまくなることは、正直さを失うことではありません。
- 何を伝え、何を伝えないのか?
- どんな言葉なら、自分に嘘をつかず、相手にも届くのか?
その境界線は、誰かが決めてくれるものではありません。
就活で問われているように見えて、本当は自分自身が考えている問いなのかもしれません。
🔍自分は、どんな人でありたいのだろう?
次の一歩
もし今日、一つだけ試すなら、紙でも、スマホのメモでも、一行だけ書いてみてください。
まず、「本当はちゃんとやっていたのに、面接ではうまく言えなかったこと」を、一つ思い出します。
たとえば、こんなふうに。
バイトで、新人のフォローをよくしていた。
これを、事実は一切変えずに、相手に見える言葉へ書き換えてみます。
新人が入るたび、最初の一週間はこちらから声をかけ、質問しやすいようにしていました。
やったことは、まったく同じです。盛ってもいません。
ただ、自分の中にあったものを、相手に届く形に「翻訳」しただけ。
この書き換えを、「なんだか、ずるいな」と感じるか。
「いや、これでいいんだ」と感じるか。
その感覚の揺れが、「あなたの正直さ」です。
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