食品の廃棄、孤食、農業が抱える課題、食料支援、食について知る機会。
私たちの生活に欠かせない「食」の周りには、一つの言葉では捉えきれないほど多くの課題があります。
今回取材した一般社団法人GRAF(以下、GRAF)は、「食から笑みを。」という理念を掲げ、食に関する社会課題の解決と、食を通してすべての人が笑顔になれる社会の実現を目指す団体です。
規格外農産物の利活用、フードバンクの周知、ゲームやデザインを通した啓発、コーヒーかすのアップサイクル、食を囲む場づくり。GRAFの活動は、一つの領域には収まりません。
代表の小野佑真(おの ゆうま)さんにお話を伺うと、その活動の背景には、実際に動く中で見えてきた課題に向き合い、自分たちの考え方や進め方を見直してきた歩みがありました。
「食から笑みを。」という理念を、現実の活動として形にするために、GRAFは何を考え、どのような選択を重ねてきたのでしょうか。
小野さんのお話から、その歩みをたどります。
企画担当者より
この記事をご覧になっている皆さんは、「食」の問題について考えたことはありますか?
身近過ぎて考えたこともないという人もいるのではないでしょうか。
私は小さい頃から、「食べ物を残してはいけない」と教えられて育ち、できるだけ残さず食べることを心がけてきました。
そのため、食に関する課題と聞いて真っ先に思い浮かんだのは食品ロスです。
実際、日本では年間約461万トンもの食品ロスが発生しており、これは国民一人あたり毎日おにぎり約1個分を捨てている計算になると言われています。
しかし、今回取材を通して感じたのは、食の課題は食品ロスだけではないということです。
食を通じて見えてくる社会課題は想像以上に幅広く、それらを解決するために本気で行動している学生や若者がいることを知りました。
今回は、食品ロス削減への想いを原点に活動を始め、現在は食に関するさまざまな社会課題の解決に挑戦している一般社団法人GRAF代表の小野さんにお話を伺いました。
この記事を読んだ皆さんが、「食」という身近なテーマを自分ごととして捉え、「自分にできることは何だろう」と考えるきっかけになれば嬉しいです。
そして何より、社会課題に真っすぐ向き合い、自ら行動を起こす学生の姿をぜひ感じていただければと思います。
ぜひ最後までご一読ください。
ガクチカの現場 企画担当:坂本悠人
一般社団法人GRAF|基本情報
※2026年7月の取材内容と、2026年9月時点の確認内容・公式情報をもとに整理しています
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 一般社団法人GRAF(グラーフ) |
| 団体ロゴ ・キャラクター | ![]() |
| 活動開始 | 2021年8月1日 |
| 法人設立 | 2022年5月9日 |
| 代表 | 小野佑真 |
| メンバー数 | 19名(2026年9月2日時点) |
| 所属する学生 | 全国各地の高校生・大学生を中心に活動 |
| 活動形態・頻度 | オンラインを中心に活動。 各チームで週1回程度ミーティングを実施。 |
| 活動内容 | コーヒーかすのアップサイクル、規格外農産物の利活用、食に関する啓発、交流イベントなど |
| 公式情報 | WEBサイト X |
「何か新しいことをしたい」から始まった
GRAFの始まりは、2021年、小野さんが通信制高校へ通っていた頃までさかのぼります。
その半年前、小野さんは高校2年生の途中で、全日制高校から通信制高校へ転学していました。
新しい学校生活に慣れてきた頃、少しずつ「何かをしたい」という気持ちが芽生えてきたといいます。
当時、小野さんが関心を持っていたのは、環境問題や社会課題でした。
学校内で参加できる活動を探す中で出会ったのが、同じ高校に通う岡野直樹さんが立ち上げた「SDGs・環境問題同好会」です。設立されたばかりの同好会であったことも、小野さんが関心を持った理由の一つでした。
「新しいことをするのは割と好きな性質でした。環境問題や社会課題に対して何かしたいという思いと、自分の性質を満たしてくれる場所が、そこだったんです」
同好会へ参加した当初は、SDGsや環境問題について学び、知識を深めることが活動の中心でした。
その後、活動を始めて1か月半から2か月ほど経った頃、一人ひとりが関心のあるテーマを設定し、調べた内容を発表する方針へと変わります。
そこで初めて分かったのが、小野さんと岡野さんが、ともに食品ロスへ強い関心を持っていたことでした。
2人は、それぞれが持っていた問題意識をもとに、食品ロスについて一緒に調べ始めます。
食品ロスの中に、過去の自分を見つけた
小野さんが食品ロスに関心を持った背景には、高校1年生のときに受けた探究授業と、小中学生の頃の給食の経験がありました。
授業のテーマは、「食の課題を解決すること」。グループごとに具体的な課題を選び、その解決方法を考えました。
小野さんのグループが選んだのは、日本の外食産業で発生する食品ロスを減らす方法でした。
この授業を通して食品ロスに関心を持つようになった小野さんは、課題について考える中で、小中学生の頃の自分を振り返ります。
当時、小野さんは、給食をほとんど毎日のように残していました。
先生によっては、給食を残すたびに謝らなければならないこともありました。周囲からは「給食を残している人」と見られ、同級生から何かを言われることもあったといいます。
「給食というと、学校の中の楽しい時間というイメージもあると思います。でも、僕は真逆で、その時間が一番嫌でした」
探究授業で食品ロスについて考えたことで、それまで別々に存在していた社会課題と、自分自身の経験がつながりました。
「自分の過去を振り返ったときに、自分の当事者性みたいなところに気づきました。自分だからこそ考えられる、ロス削減のアプローチもあるのかなと思ったんです」
食品ロスは、自分から離れた場所で、誰かが起こしている問題ではない。自分もまた、その問題に関わってきた一人だった。
その気づきは、自分だからこそ考えられる取り組みへつなげられるかもしれない、という視点を小野さんにもたらしました。
そして、食品ロスについて調べるだけでなく、実際に活動していきたいという思いが生まれます。
同好会で同じ問題に関心を持った小野さんと岡野さんは、2021年8月1日、「食品ロス削減プロジェクト」を立ち上げました。
最初から、法人をつくることや、全国のメンバーと複数の活動を展開することを考えていたわけではありません。
一人で抱えていた関心が、同じ方向を向く人との出会いによって、調べることから実際の活動へと動き始める。
そこから、現在のGRAFの歩みが始まりました。
「食品ロス」から、「食の課題」へ
「食品ロス削減プロジェクト」として始まったGRAFは、食品の廃棄を減らすための活動を進めていました。
活動を続ける中で、メンバーから新たな提案が上がります。
規格外農産物を活用するプロジェクトを始めたい。
形や大きさなどが出荷基準に合わず、流通に乗らない農産物を生かすことは、食品の廃棄を減らすというGRAFの問題意識にもつながるように見えます。
ところが、規格外農産物は、主に生産段階で発生するものです。一般的に「食品ロス」と呼ばれる、まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品とは、扱われる範囲が異なります。
それまで掲げていた「食品ロス削減」という言葉だけでは、メンバーが取り組みたいと考えている課題を、十分に説明できませんでした。
「自分たちのやりたいことと、掲げている理念や目的との不一致を感じたんです」
新しい活動を、これまでの言葉に無理に当てはめるのではなく、自分たちは何に向き合う団体なのかを、改めて考える。GRAFは、活動の定義そのものを見直すことにしました。
さらに、規格外農産物が生まれる背景へ目を向けると、廃棄だけでは捉えきれない問題も見えてきます。
農業の人手不足や、生産者の収入、地域産業をどのように持続させていくのか。
一つの農産物が活用されずに終わる背景には、生産や流通、地域が抱える複数の課題が関係しています。
「食の課題一つ取ったときにも、周りにはいろいろな課題があります。その課題にも目を向けていく必要があると思いました」
そこでGRAFは、活動の対象を、従来の「食品ロス」だけに限定しないことにしました。
GRAFでは、生産から消費までの過程で発生する廃棄を広く捉え、「食品のロス」という言葉を用いながら、孤食や農業、食料支援、食に関する学びなど、食を取り巻くさまざまな課題へ活動を広げていきます。
最初に決めた言葉に目の前の問題を合わせるのではなく、実際の活動から見えてきた課題に合わせて、自分たちが掲げる言葉や立ち位置を見直す。
現在のGRAFが食に関する多様なテーマへ取り組んでいる背景には、こうした過程がありました。
「食から笑みを。」に込めたもの
活動の対象を食品ロスから食に関するさまざまな課題へ広げる中で、GRAFは、自分たちが目指すものを改めて言葉にしました。
それが、現在の団体理念である、「食から笑みを。」です。
この言葉には、二つの目的が込められています。
一つは、食に関するさまざまな社会課題を解決すること。
もう一つは、すべての人が食を通して笑顔になれる環境をつくることです。
食に関する問題を減らすことと、食を楽しめる人を増やすこと。GRAFにとって、この二つは別々の目標ではありません。
「食事自体を楽しめていない人が、確実に世の中にはいると思います。食事をするときに、楽しいとか、嬉しいとか、そういうプラスの気持ちで向き合える人が増えるといいなと思っています」
「食から笑みを。」という言葉の中で見ているのは、食べる人だけではありません。
食材を育てる人。
収穫する人。
運ぶ人。
調理する人。
販売する人。
そして、食べる人。
一つの食事が届くまでには、多くの人が関わっています。
「食に関わらない人はいないと思うんです。生きている以上、誰でも関わるものです。食そのものがその人にとってプラスであることは、生きることそのものを、より豊かに彩っていくことだと思っています」
食品の廃棄量を減らし、必要な人へ食を届け、農業や地域が抱える問題に向き合う。そうした活動は、課題をなくすことだけを目的とするものではありません。
食をつくり、届け、囲む人たちの暮らしや時間を、少しでも豊かなものにしていくことでもあります。
その二つが実際の活動の中で重なった例として、小野さんが挙げたのが、2026年5月に実施した「コミュニティ・ダイニング」でした。
主に20代前半の参加者が集まり、一緒に食事を囲んだこのイベントには、孤食の解消、「食品のロス」の削減、食に関する知識を伝える食育という三つの目的がありました。
料理には、本来であれば活用されず、ロスになってしまう可能性のある食材も使われました。
参加者からは「楽しかった」「良い時間だった」という声が寄せられ、小野さんも、参加した人たちが楽しそうに食事をする姿を目にしました。
「課題の解決と、笑顔になることの両方が満たされていた会だったと思います」
食材を無駄にしないことと、誰かと食卓を囲み、その時間を楽しむことが、同じ場で生まれる。
コミュニティ・ダイニングは、GRAFが何を解決するのかだけでなく、その活動によってどのような時間や社会をつくりたいのかを表す取り組みでもありました。
人が増えても、活動は回らなかった
「今振り返ると、本当に間違った選択だったと思います」
小野さんがそう振り返るのは、2022年の秋から冬にかけて、GRAFのメンバーを大きく増やした時期のことです。
当時は、活動の回し方がまだ十分に確立されていませんでした。そこへ人だけを増やしたことで、思うように活動が動かなくなってしまったといいます。
「入ってくれた皆さんにも、本当に申し訳なかったという気持ちがあります」
小野さんが振り返ったのは、参加したメンバーの意欲ではなく、活動の回し方が確立されていない中で、人だけを増やしてしまったという自分たちの判断でした。
そこでGRAFは、いったん人数を減らし、団体の基盤を整えることを優先します。
ルールをつくり、プロジェクト単位の進め方を整理する。集まった人たちがそれぞれ何を担い、どのように活動を進めていくのかを考える時間に充てました。
「人数をまず少なくして、その上で団体の基盤を整える。ルールをつくったり、プロジェクト単位の進め方を整理したりする時間に充てる方向へ、考え方をシフトさせました。その時期の経験は、今に生きていると思います」
人が集まることと、その人たちが実際に動けることは同じではありません。
一度うまくいかなかった経験をきっかけに、GRAFは、メンバーを増やすことだけでなく、集まった人が活動できる組織をつくることへ目を向けるようになりました。
理念を、判断の軸に
団体を立ち上げて1年ほど経った頃、小野さんは、組織をどのようにつくり、運営していくのかに関心を持つようになりました。
組織づくりについて調べる中で出会ったのが、ミッション、ビジョン、バリュー、スピリット、スローガンの5つを組織の柱として整理する「MVVSS」という考え方です。
この考え方を手がかりに、GRAFが何を目指し、活動するうえで何を大切にするのかを整理していきました。
こうして定められたのが、「食から笑みを。」という団体理念と、GRAFの頭文字に重ねた4つの活動理念です。
- Gratitude――感謝の気持ち
- Respect others――他者を尊重する
- Act Actively――自ら動く
- Focus on Future――よりよい未来のために
理念を決めるまでには、半年ほどの時間をかけました。
メンバーの採用方法や、複数の活動をどのような単位で進めるのかについても、意見が分かれることがありました。
そのようなとき、全員がまったく同じ考えになることだけを目指すわけではありません。
まず、どこまでなら共通して合意できるのかを探す。
その土台に立ったうえで、それぞれがどこまで譲り合えるのかを考える。
小野さんは、そうして判断することが多かったと話します。
こうして定めた理念や、その後整えてきたルールは、活動の進め方に迷ったとき、GRAFとして何を大切にするのかを確かめる共通の軸になりました。
そして、その軸をもとに、メンバー一人ひとりの関心を、GRAFの活動へつなげるための仕組みも整えられていきました。
「やってみたい」が、企画になるまで
GRAFで新しい取り組みが始まるきっかけは、一つではありません。
メンバー自身が企画を提案することもあれば、役員から立ち上がることもあります。既存のチームから新たな活動が派生したり、外部の団体や企業との出会いから共同プロジェクトが始まったりする場合もあります。
メンバーから新しい企画が提案されたときには、所定の企画提案書に沿って内容を整理します。
何を実現したいのか。
なぜGRAFとして取り組むのか。
活動として実現できる内容なのか。
本人の関心を出発点にしながら、団体の目的や実現可能性と照らし合わせ、GRAFの活動として進めるかを検討します。
「やってみたい」という思いを大切にすることと、思いついた企画をそのまま始めることは同じではありません。
一人の中にある関心を言葉にし、ほかのメンバーと共有しながら、団体として取り組める企画へ整えていきます。
一方で、代表や役員が、メンバーの活動をすべて決めるわけでもありません。
どのチームに所属するのか。どのテーマに関わるのか。外部で行われるイベントへ参加するのか。基本的には、本人が自分の関心に応じて選びます。
「自分がやりたいことを、自分で選ぶのが基本の進め方です。それぞれが選んだ先で、それぞれのやりたいことができているのかなと思います」
メンバーの「規格外農産物に取り組みたい」という声も、こうしてGRAFの活動へとつながっていきました。
河北町とのつながりから、商品開発へ
規格外農産物に取り組みたいというメンバーの関心と、食を通して山形県河北町の魅力を発信する外部団体との出会いが重なって始まったのが、「Ka’HOKU(カホク)」です。
GRAFの「規格外品」チームが進めるこの取り組みでは、河北町の魅力を広く伝えることと、町で発生する規格外農産物を活用することを目指しています。
ただし、最初から規格外農産物を使った商品を開発したわけではありません。
GRAFが最初に担ったのは、外部団体が都心で行っていた河北町の産品販売を手伝うことでした。
規格外農産物を自分たちだけで仕入れ、販売していくことは簡単ではありません。そこで、すでに行われていた販売の場に加わりました。
販売を手伝う中で河北町や農産物について知り、活動に関わる人たちとの接点を増やしていきます。
「いろいろなフェーズがありました。販売のお手伝いから始めて、徐々に町とのつながりも生まれてきました。今は、規格外農産物を使った商品開発に着手しようとしている段階です」
関係が積み重なるにつれて、GRAFが担う役割も少しずつ広がっていきました。
その先で、新たな判断が必要になります。
当初考えていたのは、規格外農産物を加工せず、そのまま都心で販売する方法でした。しかし、活動を進める中で、農産物を使った商品を開発する案が持ち上がったのです。
商品開発まで踏み込むのか。
それとも、当初考えていた販売の形を続けるのか。
メンバーの意見も分かれました。
それぞれが考えを出し合い、できるだけ多くの人が賛同できるかを確認したうえで、最終的には商品開発へ進むことを決めました。
河北町に関わるメンバーの多くは関東圏に暮らし、小野さんも秋田県から活動に参加しています。日常的な企画や調整は、活動の対象となる地域から離れた場所で行われます。
小野さんは、さまざまな人が関わるからこそ、それぞれの意向を踏まえながら企画を提案し、コミュニケーションを取ることを大切にしていると話します。
メンバーの関心から始まり、販売を手伝う中で町とのつながりが生まれ、その関係の先で活動が商品開発へと進んでいく。
Ka’HOKUは現在も、関わる人たちとの間で活動の形を育てている途中です。
異なる人と、活動を動かす
GRAFでの活動には、全国各地の高校生や大学生が参加しています。
活動によっては、団体のメンバーだけでなく、地域の方、企業、学校、NPOなど、異なる立場や経験を持つ人たちとも関わります。
「どの取り組みも、いろいろな人とコミュニケーションを取りながら進めます。その力は、普段の活動を通して身につけられると思います」
高校生と大学生が一緒に活動すれば、自分より年下の人とも、年上の人とも、同年代の人とも関わります。さらに外部の人が加われば、それぞれが持っている情報や経験、活動に期待することも異なります。
自分の考えを伝えるだけでなく、相手が何を考えているのかを聞き、必要に応じて調整しながら、一つの活動を進めていくことが求められます。
調査や情報発信、デザイン、販売、イベント運営など、活動への関わり方も一つではありません。
代表やチームリーダーにならなくても、自分が関心を持った活動を選び、その中で役割を担うことができます。
活動を続ける中で、メンバーの関わり方そのものが変わっていくこともあります。
GRAFで使用しているチャットツールや、外部の方へのメールなど、やり取りの機会を重ねる中で、最初は文章の書き方やツールの使い方に戸惑っていたメンバーが、相手や状況に応じて文章を考え、自分から連絡を取れるようになることもあります。
その中でも、小野さんがより大きな変化として感じているのが、「誰かから頼まれたことをする」だけではなく、「自分で考えて動く」ようになることです。
「最初は、こちらからお願いした仕事に取り組んでいたメンバーが、『これをやった方がいいと思います』『こうしたらもっと良くなるのではないでしょうか』と、自分から企画や改善案を提案するようになることがあります」
自分の仕事を進めるだけでなく、チームやGRAF全体にとって何が必要なのかを考え、周囲に声をかける。そうした姿に、小野さんは一人ひとりの成長を感じています。
そして、こうした主体性を持つメンバーが増えていくことは、個人の成長だけでなく、団体そのものの成長にもつながっていくと考えています。
GRAFで得られるのは、食の課題について知ることだけではありません。
自分で関わる場所を選び、立場の異なる人たちとやり取りしながら、自分なりに考え、周囲と活動を動かしていく経験でもあります。
活動を支える「人」と「お金」
さまざまな取り組みを進める一方で、GRAFには現在も課題があります。
小野さんが挙げたのは、活動に関わる人を増やすことと、安定して運営を続けられる資金を確保することでした。
GRAFでは、活動に共感する個人や企業が、会員として団体を支援できる制度を設けています。また、必要としているのは資金だけではありません。
プロジェクトによって、商品開発の知識や技術、販売する場所、地域や生産者との接点など、必要となる協力の形は変わります。
「それぞれの取り組みを見て、『ここなら関われる』と思う部分がある企業や方がいたら、連絡をいただけると嬉しいです」
活動を立ち上げるだけでなく、続けられる状態をどうつくるか。
「食から笑みを。」を継続的な活動として形にしていくために、GRAFは今、一つひとつの取り組みを進めながら、その活動を支える土台づくりにも向き合っています。
最初の一歩は、つながること
取材の最後に、食や社会課題に関心がありながら、まだ行動に移せずにいる学生へのメッセージを伺いました。
自分に何ができるのか分からない。専門的な知識や経験もない。興味はあっても、自分から団体へ連絡するのは難しい。
そのような人に対して、小野さんは、最初から大きな行動を起こさなくてもよいと話します。
「世の中の課題に興味を持っている時点で、すごいと思います。社会課題でなくても、自分の好きなことや興味が一つでもあれば、それも素晴らしいことだと思います」
最初の行動として小野さんが勧めるのは、もっと小さなことです。
興味のある団体のSNSをフォローしておく。ボランティア募集サイトで、気になる活動に「いいね」をつけておく。
すぐに参加しなくても、関心のある場所とつながっておけば、自分が動きたいと思ったときにアクセスしやすくなります。
「自分から声をかけるのは、最初は難しいと思います。だから、まずはSNSをフォローしておくぐらいでも良いと思っています」
小野さん自身も、最初から法人を立ち上げようと考えていたわけではありません。
同じ問題意識を持つ人と出会い、食品ロスについて調べ始めたことが、現在のGRAFへつながっています。
最初の一歩は、必ずしも大きな決意や行動である必要はありません。
小さな接点を持っておくことが、いつか自分の関心を活動へ変えるきっかけになるのかもしれません。
| ガクチカの現場|FEST TOKYOの現場で培われる3つの力 |
|---|
| 💪一つの課題を、周囲とのつながりから捉える力✨ 規格外農産物の廃棄だけを見るのではなく、農業の人手不足や生産者の収入、地域の魅力発信など、課題の周囲にある状況にも目を向けます。 一つの課題を、ほかの問題とのつながりの中で捉えていく力です。 |
| 💪自分の関心を、他者と動かせる企画に変える力✨ 「やってみたい」という思いを言葉や企画に整理し、団体の目的や実現可能性と照らし合わせながら、仲間と取り組める活動へ変えます。 自分の関心を個人の中だけにとどめず、他者と共有し、実際に動かせる形へ整えていく力です。 |
| 💪異なる立場の人と、現実に合う進め方を探す力✨ メンバー、地域、外部団体など、それぞれの考えやできることを確かめながら、最初の計画だけにこだわらず、活動を前へ進める方法を探します。 異なる立場の人と話し合い、そのときの状況に合う進め方を探していく力です。 |
一般社団法人GRAFで活動してみたい方へ
※募集情報は変更される場合があります。最新情報は団体へお問い合わせください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| こんな方におすすめ | ・「食」の社会課題に関心がある方 ・食分野に興味のある仲間と出会いたい方 ・GRAFが展開する特定の活動(チーム)に携わりたい方 |
| 対象者 | 年齢・居住地域による制限なし ※全国各地の高校生・大学生を中心に活動 |
| 参加までの流れ | 応募、面談、参加同意書の記入、研修などを経て活動開始 |
| 参加・見学方法 | 下記のお問い合わせフォーム、または応募フォームよりご連絡ください |
| お問い合わせ | お問い合わせフォーム |
| 応募フォーム | 応募フォーム |
| 公式リンク | WEBサイト X |
取材を終えて:「食から笑みを。」を形にするために、変わり続ける
小野さんのお話を伺いながら、特に印象に残ったのは、何かがうまくいかなくなったときの向き合い方でした。
思い描いていたように進まないとき、目の前の出来事だけを見るのではなく、自分たちが使っている言葉や方法、組織のあり方まで見直していく。
取材を通して見えてきたのは、そんなGRAFの姿勢でした。
その中心にある「食から笑みを。」という目指す先は変わりません。
変えてきたのは、それを現実の活動として形にするための方法です。
小野さんが、過去の判断やうまくいかなかった経験についても率直に振り返り、「何が起きたのか」「次に何を変えたのか」を一つずつ整理して話していたことも印象的でした。
変わることそのものではなく、大切にしたいものを実現するために、必要なものを選び直していく。
思いを持つことと、その思いを、ほかの人と一緒に続けられる活動にしていくことは同じではありません。
自分が大切にしたい言葉を、言葉で終わらせないために、私たちは何を見直し、誰と進んでいく必要があるのでしょうか?
GRAFの歩みは、そんな問いを残してくれました。
取材協力への御礼
本記事の取材にあたり、ご多忙の中、丁寧にお話をお聞かせくださった一般社団法人GRAF代表の小野佑真さんに、心より御礼申し上げます。
食品ロスへの関心の原点から、食に関する多様な課題へ活動を広げてきた背景、組織づくりにおける試行錯誤まで率直にお話しいただき、GRAFさんが「食から笑みを。」という理念を活動として形にしていく歩みを、深く知ることができました。
一般社団法人GRAFの皆さまの今後の活動を、ガクチカワーク編集部一同、心より応援しております。
取材日:2026年7月29日(水)
ガクチカワークから、学生の皆さんへ
就活のために、学生時代にしかできないことを諦めなくていい。
学生団体や部活動、研究、留学、インターン、アルバイトなど、学生の皆さん一人ひとりが積み重ねてきた経験には、まだ言葉になっていない価値があります。
今ある経験も、これから踏み出す一歩も、あなただけの「学生時代に力を注いだこと」につながっていきます。
ガクチカワークでは、「ガクチカの現場」のほかにも、社長の学生時代をたどるインタビューや、ガクチカの見つけ方・書き方、インターンの選び方、学生自身のリアルな経験など、自分のこれからを考えるヒントになるコンテンツをお届けしています。
今の経験をどう捉えたらいいのか。
これから何をしてみたいのか。
気になるテーマから、ぜひのぞいてみてくださいね。
ガクチカワーク編集部
「ガクチカの現場」では、実際に学生が活動する場所を訪れ、そこで交わした対話から、本人たちもまだ言葉にしていない学びや葛藤、変化を伝えています。
活動を紹介して終わるのではなく、学生たちの経験にある価値を言葉にし、読者や社会へ届けます。そして記事の公開後も、その団体や学生の挑戦を見守り、応援していきます。
企画・取材調整:坂本悠人(ガクチカワーク学生編集メンバー)
取材・執筆・編集:ガクチカワーク編集部
監修:ルーキーワークス株式会社
