「企業は、ガクチカの何を見ているんですか?」

就職活動を始めると、多くの学生がこの疑問を持ちます。

実績の大きさでしょうか。
リーダー経験でしょうか。
行動力やコミュニケーション能力でしょうか。

企業によって、見ているものは異なります。

成果を重視する企業もあります。
話し方や論理性を重視する企業もあります。
人柄や価値観を知ろうとする企業もあります。

そして、少し厳しいことを言えば、すべての企業が一人ひとりの学生を丁寧に理解できているわけではありません。
限られた面接時間の中で、目立つ実績や分かりやすい受け答えに評価が引っ張られることもあります。

では、学生はどうすればよいのでしょうか。
企業が何を見ているのかを考える前に、まず知っておきたいのは、ガクチカだけで人のすべてを理解することは、企業にとっても難しいということです。

企業が本来知りたいのは、経験の名前だけではない

企業が学生にガクチカを聞くのは、過去の活動を表彰するためではありません。
多くの場合、企業が知りたいのは、その経験を通して表れた、学生の考え方や行動です。

例えば、

  • どんなことに気づく人なのか
  • 何があると動く人なのか
  • うまくいかないとき、どう向き合うのか
  • 周囲の人とどう関わるのか
  • 経験から何を学び、次にどう生かすのか

といったことです。
これらは、入社後の働き方を考える手がかりになります。

しかし、ここで注意が必要です。
企業が「知りたい」と思っていることと、実際に「知ることができている」ことは同じではありません。

面接だけで、その人らしさを理解するのは難しい

面接では、学生も企業も限られた時間の中で相手を理解しなければなりません。

学生は緊張しています。

過去の経験を十分に整理できていないこともあります。
本当は迷いや失敗があったのに、きれいな成功談にまとめようとすることもあります。
企業が求めていそうな答えを考え、自分の言葉ではなくなることもあります。

一方、企業側にも限界があります。

面接官が採用の専門家とは限りません。
何をどう聞けば、その学生の特徴が分かるのか整理されていないこともあります。
企業ごと、面接官ごとに質問や評価が変わることもあります。
短い時間で比較するため、数字や役職、話の分かりやすさに頼ることもあります。

つまり、

学生は、自分をうまく伝えられない。
企業も、学生をうまく理解できない。

ということが起きます。

ガクチカで学生と企業がすれ違う理由の一つです。

分かりやすい実績が、有利になる場面はある

「企業は実績の大きさを見ていません」と言い切ることはできません。
全国大会、売上向上、リーダー経験、長期間継続した活動など、分かりやすい実績が注目されることはあります。
応募者が多い企業では、書類選考の段階で、短時間で判断しやすい情報が重視されることもあります。

だから、

「普通の経験でも、企業は必ず深く見てくれる」

と考えるのも危険です。

企業が深く見てくれることを待つだけでは、自分の経験は伝わりません。
学生側も、自分が何を考え、どう動いたのかを整理しておく必要があります。
ただし、それは経験を大きく見せるためではありません。
分かりやすい実績がないからこそ、経験の中で起きていたことを、具体的に説明できるようにするためです。

「何をしたか」だけでは、企業にも分からない

例えば、

「飲食店でアルバイトを頑張りました」

と伝えたとします。

これだけでは、企業には何も判断できません。

同じ飲食店のアルバイトでも、

  • お客様への対応に力を入れた人
  • 作業の効率化に取り組んだ人
  • 新人が働きやすい環境をつくった人
  • シフト内の人間関係を調整した人
  • 言われた仕事を正確に続けた人

では、経験の中身が違います。

しかし、企業が必ず詳しく聞いてくれるとは限りません。
「具体的には?」と一度聞かれただけで、次の質問へ進むこともあります。

だからこそ学生自身が、

  • 何が起きていたのか
  • 自分はどこに気づいたのか
  • なぜ行動したのか
  • 何を工夫したのか
  • 誰と関わったのか
  • 何が変わり、何が変わらなかったのか

を整理しておく必要があります。

企業の質問力に、自分の評価をすべて委ねないためです。

成功した話だけを準備すると、自分が見えなくなる

ガクチカでは、成果を求められると思い、成功した部分だけを話したくなるかもしれません。
しかし、企業が本当に働く姿を知ろうとするなら、成功だけでは不十分です。

仕事では、予定どおりに進まないことがあります。

失敗したときにどう考えたのか。
誰かに相談したのか。
意見の違いをどう扱ったのか。
途中でやり方を変えたのか。
最後まで解決できなかったことはあるのか。

こうした過程に、その人の特徴が表れます。

ただし、失敗を話せば必ず評価される、という意味でもありません。
失敗を話すこと自体に価値があるのではなく、自分がその出来事をどう捉えているかが重要です。

企業が聞きたい答えをつくるのではなく、経験の事実と、自分の考えを分けて整理することが必要です。

企業の評価だけを基準にすると、ガクチカは苦しくなる

ガクチカを考えるとき、「これは企業に評価されるだろうか」ばかり考えると、経験の見方がゆがみます。

本当は周囲に助けてもらったのに、自分一人で成し遂げたことにする。
成果が小さいため、数字を必要以上に強調する。
企業が求めていそうな強みに合わせて、経験の意味を変える。

その結果、自分でも、自分がどんな人なのか分からなくなります。

企業に伝わるように経験を整理することは必要です。
しかし、企業に好かれる人物へ自分をつくり替える必要はありません。

自分が実際に何を考え、どう動いたのかを整理し、それを企業に伝える。
企業の反応を見ながら、その会社が自分をどのように見ようとしているのかも確認する。

ガクチカは、学生だけが評価されるためのものではありません。
企業の見方を、学生が確かめるための材料でもあります。

良い企業かどうかは、ガクチカの聞き方にも表れる

面接でガクチカを聞かれたとき、学生は自分の答えだけでなく、企業の質問にも目を向けてください。

例えば、

  • 実績や数字だけでなく、過程を聞こうとしているか
  • 学生の説明を遮らずに聞いているか
  • 失敗を話したとき、責めるだけになっていないか
  • その学生に合わせて質問を変えているか
  • 分からない点を確認しようとしているか
  • 学生の考えを、勝手に決めつけていないか

こうした聞き方には、その企業が人をどう見ているかが表れます。

もちろん、面接官一人の対応だけで会社全体を判断することはできません。

それでも、自分が話した経験をどのように受け止めたのかは、その企業を知るための情報になります。

企業が学生を見ているのと同じように、学生も企業を見てよいのです。

ガクチカワークで経験を可視化する意味

ガクチカワークでは、就職活動の直前に、完成されたガクチカだけをつくるのではありません。

学生時代の活動の中で、

  • 何を経験したのか
  • どこで迷ったのか
  • 何を考えて行動したのか
  • 誰と関わったのか
  • どんな変化があったのか

を残し、見えるようにしていきます。

これは、企業の代わりに学生を評価するためではありません。

また、企業が面接で何も聞かなくてもよくなるためでもありません。

学生自身が経験を振り返り、企業側もその過程を知る手がかりを持つことで、面接での対話を具体的にするためです。

経験が可視化されていれば、企業は、

「学生時代に頑張ったことは何ですか?」

という大きな質問だけでなく、

「このとき、最初の方法から変えたのはなぜですか?」

「この人との関わりが、自分の考えにどんな影響を与えましたか?」

と、経験に即した質問ができます。

学生も、その場で急に思い出して答えるのではなく、自分の経験を踏まえて話せます。

企業が知りたいことと、学生が伝えたいことの間にあるずれを、少しでも小さくする。

そのために、経験を可視化する意味があります。

企業が何を見るかより、自分が何を伝えたいかを持つ

企業がガクチカの何を見るかに、唯一の答えはありません。
企業によっても、仕事によっても、面接官によっても違います。
だからこそ、すべての企業に評価されるガクチカをつくろうとしないことです。

まずは、自分の経験を振り返り、

  • 自分は何に気づきやすいのか
  • どんなときに動くのか
  • 問題が起きたとき、どう向き合うのか
  • 人とどのように関わるのか
  • どんな環境で力を出しやすいのか

を、自分の言葉で説明できるようにする。
そのうえで、企業が何を聞き、どう受け止めるのかを見る。

ガクチカは、自分を企業に合わせるためのものではありません。
自分の経験を企業に伝え、企業が自分をどのように見ようとしているのかを確かめるためのものです。

📝ワーク:企業任せにしないための3つの問い

企業が、自分の経験をどこまで丁寧に聞いてくれるかは分かりません。

だからこそ、企業から質問されて初めて考えるのではなく、自分の中で先に整理しておくことが大切です。

これまでに力を入れた経験を一つ思い浮かべ、次の3つの問いについて考えてみてください。

1.結果だけでは伝わらない、途中の出来事は何ですか?

ガクチカでは、つい結果を中心に話してしまいます。
しかし、その結果にたどり着くまでには、

  • なかなかうまくいかなかった時期
  • 誰かと意見が合わなかった場面
  • 自分の考えを変えた出来事
  • 誰かに助けてもらったこと
  • 最後まで解決できなかったこと

があったのではないでしょうか。

成果だけを伝えた場合には見えなくなる、自分にとって重要な途中の出来事を、書き出してみてください。

2.企業に、必ず知っておいてほしいことは何ですか?

経験のすべてを、エントリーシートや面接で話せるとは限りません。
それでも、

「この結果だけを見て判断してほしくない」
「本当は、ここで一番悩んだ」
「自分が最も大切にしていたのは、このことだった」
「周囲に助けてもらったことも含めて伝えたい」

と思うことはないでしょうか。
企業に評価されそうなことではなく、その経験を理解してもらうために欠かせないことを、一つ選んでみましょう。

3.自分を理解してもらうために、どんな質問をしてほしいですか?

面接では、企業からどんな質問をされるかを予想し、答えを準備することが多いでしょう。
ここでは反対に、自分を理解してもらうためには、どんなことを聞いてほしいかを考えてみます。

例えば、

  • なぜ、それが気になったのか
  • 途中で最も迷ったことは何か
  • 誰に助けてもらったのか
  • 結果が出なかった部分をどう考えているか
  • もう一度取り組むなら、何を変えたいか

などです。

「この質問をされたら、自分のことをもう少し正確に伝えられる」と思う問いを、つくってみてください。

まずは、文章にせず書き出してみよう

最初から、面接で話せる形にまとめる必要はありません。

まずは、

  • 結果だけでは伝わらない途中の出来事
  • 企業に必ず知っておいてほしいこと
  • 自分を理解してもらうために聞いてほしいこと

を、それぞれ箇条書きで書き出してみてください。

この3つが整理されていると、企業の質問の仕方に左右されすぎず、自分の経験を自分の言葉で話しやすくなります。
また、企業がどの部分に関心を持ち、何を聞こうとするのかを見ることで、その企業が人をどのように理解しようとしているのかも見えてきます。

ガクチカを考えることは、企業に評価される答えをつくることではありません。

自分の経験を、自分で見失わないようにすることから始まります。

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